ふってわいた…



俺は黒崎一護、職業は死神代行。
いきなり、貞操の危機に陥っている。

「ちょ、弓、親…弓親さん、やめ、ぅあ…」

一角と剣八がどこかに出かけたようなので、どこに行ったのかを聞いた。
その返答は予想だにしないものだった。
『僕、君に名前呼び捨てられるほど、君と仲良くないと思うけど?』
そうして、新しい玩具が手に入った子供のような笑顔を浮かべた。
『僕を名前で呼ぶ一角と隊長がやってること、君もやる?』
なにをするのか、すぐに察しがついた。
弓親が死覇装の上から触ってきたからだ。
一角や剣八が男を抱くということに、少なからず動揺する。
いや、もしかしたら弓親は、女なのだろうか?

「安心しなよ。人間の体は童貞のままだから。」

「いや、そ、いう問題じゃ、ねぇ…だろ。」

人に触られたことなどない場所を撫でられ、言葉が切れ切れになった。

「じゃあ、何が問題なのさ。」

「俺とあんたじゃ、こんな事する理由がねえ。」

「理由が必要?」

「あたりまえだろ!」

「理由なんて、後で幾らでもつければいいさ。」

「おい!」

腰紐を解く手付きが手慣れている。
俺を掴もうとするその手を掴んで止めさせた。

「石頭だね。じゃあ、本能って事にしておこうか。」

「は?」

「男がSEXを欲するのは、当たり前のことじゃない。」

こんなことは駄目だと首を振る。

「男同士で、しかも会ったばっかりの二人ですることじゃねぇ。」

「でも、君の半身はそうは言ってないみたいだけど?」

言われて、カッと赤面する。
そう。俺の雄は元気になっていた。

「しょうがねえだろ!健全な男子高校生なんだ!!」

「…理由、あるよ。僕、君に興味があるんだ。」

「え?」

微笑みを絶やし、俺を見つめている。
ゾッとする程に美しいと思った。

「一角や隊長が君に夢中になるなんて、気に入らない。」

「え?は?」

「だから、君を僕に夢中にさせてあげるよ。」

意地悪そうに、笑う。
掴んだ反対の手が、俺をやんわりと刺激する。

「ちょ〜…おい、やめ!…ン、ぅあ。」

緩急をつけて弄られて、俺は我慢できずに放ってしまった。

「もう、イっちゃたの?」

茫然とする俺に笑いかけるその顔を、不覚にもかわいいと思った。
あわてて目を逸らすと、弓親の死覇装に、精液がベッタリとかかってしまっている。

「わ、悪い。汚した。」

「君を汚したのは僕だよ。なに謝ってるのさ。」

「そ、それもそう…うわ!」

弓親が再び俺を手に取った。

「若いんだから、こんなものじゃないよね。」

「弓親!…そんな、汚いの…ぁあ…」

股に蹲り、口に咥える。
その様に妙な感情が生まれる。

「もうこんなになったね。気持ちいい?」

「聞くな…黙れ…」

恥ずかしさで泣きたくなる。

「ちょっと、待ってて。」

着物を脱ぎはじめた弓親を涙目でボンヤリと見つめる。
あ、やっぱり男だ…

「弓…」

始められた行為に、言葉を失う。
やり方が全然違うが、自慰であることは明らかだ。
尻の穴に指を突っ込んで、気持ちいいのだろうか?

「あ…ン、はぁ…」

次第に上がりはじめた嬌声。
その艶やかさに、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「弓親…」

初めて見る、恍惚とした表情。
人間はこんな顔をするものなのか…

「は、ぁ…も、いい、かな…」

「あ…」

上からゆっくりと、中に、入っていく…
こんな快楽は、知らない。
全部納めると、弓親は俺の首に両手を回して抱きついてきた。
どうしていいかわからなくてオロオロしていると、ゆっくりとした上下運動が始まる。

「ね、腰、動かして…」

「腰?」

「ふふ。まだ無理かな?」

挑発だとわかっていても、睨みつけずにはいられない。

「くそ…」

「いいね、その眼。ドキドキするよ。」

それはこっちのセリフだ。
俺を見る、その眼に酷く興奮する。
もう、考えるのは…

「ヤめた。」

「え?」

押し倒した。
無我夢中で腰を振る。
ヤったことなどなくても、知識はある。そういうことに興味のあるお年頃なのだ。
男相手でも、そう変わりはないだろう。喘ぎはじめた弓親に、それは立証された。
我に返ったのは、すべて終わった後だった。
『女の子とやる時は、ちゃんと避妊しなよね。』
弓親は言い捨ててどこかに消えた。

「…なにやってんだよ、俺…」

いきなりふってわいた災難だか幸福だかに、実は真面目で繊細な俺は頭を抱えた。







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