キライ
「僕、君のこと嫌いだよ。君は輝いていないもの。」
俺だって、嫌いだ。っていうか、苦手だ。
副隊長が五席に負けた負い目もあるし、なんか、俺だけ秘密を知っているっていうのも心に引っ掛かっている。
輝いてない…って、まあ、あいつの好きな三席はそりゃあめちゃくちゃ輝いてるもんな(頭が)…
…好きな、三席…
そう彼の前では、本当にあいつは輝いているんだ。
「修兵、あんた何ボーっとしてんの?」
「ら…乱菊さん、どうしてここに!」
突然憧れの女性に登場されて、修兵は慌てふためいた。
乱菊は呆れ顔で溜息を吐く。
「大丈夫?ここ、うちの詰所なんだけど…」
「え…あ、そうだ、これ、今月分の瀞霊廷通信です。中に通販目録が入ってます。」
乱菊は瀞霊廷通信を受け取ると、ペラペラとページをめくり、修兵につき返した。
「ふ〜ん。もう読んだわ。あんた、弓親ん所に持って行ってよ。」
「…え!いやいや、隊長に見せなくていいんですか?っていうか、俺が持って行くんですか?それも、なんで五席に?」
「あそこに書類持っていっても、弓親以外に渡したら永遠に処理されないわよ?」
それじゃあと、踵を返し部屋へ戻っていく乱菊を、急いで引き留める。
「待ってください。無理です。俺、あいつに嫌いだってさっき言われたばっかりなんで…」
「弓親が?あんたを?嫌いって?」
意外そうに目をパチクリさせて、乱菊が聞き返してきた。
「え、あ、そうです。すれ違い様開口一番で…」
思い出して少し気分が沈む。そんな修兵を見て、クスクスと乱菊が笑い出した。
不思議そうに乱菊を見つめる修兵の肩をバシバシ叩きながら、次第に笑い声が大きくなる。
「弓親の嫌いは好きと似たようなもんよ?」
「…は?」
「弓親って、人を嫌うほど他人に興味ないからね。」
「はぁ…?」
「それって、あんたに興味があるってことでしょ?」
「はい。…え?」
嬉しそうに語る乱菊の勢いに押されて、一瞬肯定してしまった。
「あんただって、弓親のこと好きなんでしょ?」
「はい…って、え?いいえ?NOです!違います!!」
真っ赤になって否定する修兵を、乱菊は冷たく一瞥する。
「嫌いって言われて、この世の終わりみたいな顔してるくせに?」
「!…それは…」
心当たりはなくもなかった。
弓親に負けてからというもの、気になって仕方がなかった。
一角の隣で笑う弓親を見ると、ズキリと心が痛んだ。
好き…なのかもしれない。だけど…
「あの子は十一番隊なのよ?グズグズしてたらあっという間に死んじゃうわよ?!」
「でも、あいつには…」
寄り添う二人の影は一つ。その間に入り込むことなど、不可能…
初めから望みのない恋なんて空しいだけだ。
「ねえ…あの子はとっても危ういわ。いらないと言われても、手を放さないで。」
「…」
乱菊の表情は怖いくらい真面目で、修兵は逆らうことが出来なかった。
「どんな愛にも力があるわ。」
「力…?」
「あの子は、自分で立っていないもの。いつか必ず崩れるわ。」
嫌われたくない…と言う声を思い出す。
十一番隊の面々が鬼道系だと言うだけで、弓親を嫌うわけがない。
臆病になるのは、そこが拠所であるが故。
「そのいつかまで、見守れと…?」
「身内じゃないあんたじゃなきゃ意味ないわ。あんたのその死んだような眼も、ちょっとは悪夢から醒めるんじゃない?」
輝いていないとか眼が死んでるとか、なんなんだ今日は…
「滑稽な道化じゃないか…」
「あら、何言ってんのよ?最終的には王子様じゃない。私の親友、頼んだわよ!」
軽やかに笑って、乱菊は去って行った。修兵は意を決して十一番隊の詰所へと足を向ける。
「僕、君のこと嫌いだよ。君は輝いていないもの。」
いくらでも、嫌えばいい。いくらでも、曝け出せばいい。
あいつが素のあいつになれるなら、俺は喜んで罵られよう。
蚊帳の外から俺は、そのいつかが…いつまでも訪れない事を願う…
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わかりにくい話を書いてしまった…弓親出ないし…
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