やさしい愛なんていらない





「一角…お願い…もっと…」

もどかしい。傷つけないように、慎重にゆっくりと動く指。熱を帯びてなお、慈しむ様に見つめる瞳。
ものたりない。獣のように荒々しく、欲望に瞳を充血させ、互いに貪り合いたいのに。

「弓親…」

丁寧で器用な一角のSEXがよくないわけではない。反り立った肉棒は先走りの液体を溢れさせている。
弓親の性感帯を熟知した、その指に舌に翻弄され、触れられるたびにビクビクと体が躍る。

「あ…ぁ…一角、もぉ…」

ビチャリグリョリと卑猥な音をたて、一角の長い指が進入する。掻きまわされ擦られ、弓親はだらしなく涎を垂らす。

「弓親、いいか?」

優しい声。一角が自分を大切に想ってくれていることは知っている。一角を誰よりも愛しいと思う。
一角の隣は居心地が良くて、ここが自分の居場所だと…

「…一角…ぅンッ…」

貫かれ腰を振る度、募るのは失望感。互いの心に捩れが生じたことに、独り、気付いてしまった…
何故なら歪んだのは、自分なのだから。

「弓親?…痛いのか?」

一角は弓親の閉じた瞳から溢れた涙を舐めとり、汗に湿った長い黒髪を梳く。
弓親は一角の胸に縋りつき、ゆっくりと左右に首を振った。

「ねえ…一角、上、乗っていい?」

「ああ」

男根を抜き体制を入れ替え、一角の体のあちこちに口づけを落す。

「傷、痛む?」

先日、更木の剣八と闘った際に受けた傷跡をそっと撫でられ、一角はピクリと肩を揺らした。

「なんともねえよ」

一角は弓親の細い顎に手を添え、唇を合わせた。舌を絡ませ、長い長いキスをする。

「一角…好きだよ」

「ああ」

一角の男根を軟らかく手に取り、あてがう。ゆっくりと先端部を呑み込むと、一気に腰を落とした。
上に、下に、強く、優しく、快楽に溺れる。

「は…ぁ、一角…も、いく…」

「いけ…よ…俺も…いく」

一角の腹に白濁液が飛び散る。射精してビクビクと波打つ弓親の中に、一角も精を放った。


ねえ…一角、君が死ぬのは厭なんだ。





意識を手放した弓親に、一角は優しいキスをする。
血の気の引いた青白い顔を見ると、申し訳ない気持ちとともに、嫌悪感が湧き上がる。

何時の間にか。目が。女のようになった。気がする。

はじめに凌辱したのは自分だったというのに、淫猥で嬌艶な情人の媚態が切ない。
友情と愛情の間で、往き場のない感情が、右往左往。

「…ま…俺の所為…か…」

ベタベタして気持ちが悪いが面倒くさくなったので、そのまま弓親を擁くと、目を閉じた。
体温が心地いい。全身全霊で一角を愛してくれる弓親を愛おしいと思う。
それでも…


なあ、弓親…お前と同じだけ、俺はお前を愛してやれない…








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